信長さまは、刀を抜き妖に思い切り振り切った。
妖はその刀をかわし、信長さまに打撃攻撃を向ける。
信長さまは素早く後ろに飛びのき、攻撃をかわすとすぐさま攻めの態勢に入った。
どうして信長さまは戦うんだろう。
見ていて、思うんだ。
だって、信長さまはもう死んでしまっていて。
妖が何をしようが、言ってみればもう関係なくて。
成仏もせず、こうして戦うことを選ぶのは、なぜ?
ああして戦っても、私にしか見えなくて。
妖なんてものが存在することすらほとんどの人は知らなくて。
それなのに、あんなにも真っ直ぐに向かって行く。
私は、生きていて、見えているのに何もできないのに。
「ッ!すず!逃げろ!」
ハッとして顔をあげると、妖が私に向かってきていた。
ぬっと目の前に立つ。
初めて信長さまに名前を呼ばれたとか、そう言えばさっきも一度呼ばれた気がする、なんて、現実逃避のように思いながら。
私の足は、地面に張り付いたように動かなかった。