だから、そのハンカチは今でも私の手元にある。
そういえば、しまってどこにやしたっけ。


あまり顔もよく覚えていない男の子。



そういえば、ハンカチにイニシャルがあった気がする。
なんだったっけ・・・。



やよいの恋バナですっかり思い出してしまった。




あの恋は、ただの憧れみたいなものだった。
たった一度会っただけだし。
名前も、なにも知らない人。




「でも、もう一度会いたいなぁ」




なんとなく、惹かれたんだ。
優しいそのしぐさや、雰囲気。


顔は覚えていないけれどとても綺麗な顔で笑っていたのは覚えてる。





「だらしない顔だな」




うぐ。
思い出に浸っていたら突然現実に引き戻す声。
ギロリと声の主を睨みつける。