時枝くんが立ち去って一人きりになる。
胸が痛い。

でもきっと、時枝くんはもっと痛いはず。


好きな人に、好きって思ってもらうのって、本当に奇跡みたいなものなんだな・・・。




「こんなちんちくりんがいいなどと、あの男も瀬名もおかしな奴らだな」

「っ、ちんちくりんって!ていうか、覗き見反対!」

「好きで覗いていたわけではない」




なんだか、信長さまの存在がいつの間にか当たり前になりすぎて。
最近は、必要以上に喋らないし。

というか、あの妖と会ってから、特に・・・。



夾くん同様、信長さまも悩んでいるんだろうか。




「教室、もどろ・・・」




なんか、戻りにくいけど。
教室には時枝くんも、夾くんだっているし。



すごく、気まずい。




「・・・私、瀬名くんのこと!」




歩き出したその足をピタッと止める。
校舎の過度の向こう側に、人の気配。


それに、この声・・・。