「残念ながら、この妖気だけが残ったこの刀では妖しか斬れぬだろうがな」
「い、いいです、それで十分です!」
怖ろしいことを言う人だわ。
住んでいた時代が違うんだもの。
考え方、価値観が違って当然なのかも。
だって、この人の側にはいつだって“死”があったんだもの。
「え、でも、じゃあ、今でもその妖っていうのがいるっていうんですか?」
「お前が言うように、事件が増えているというのなら、可能性はあるな」
「・・・ウソ」
「まぁ。人間、悪しき心を持つものなどいつの世にもいるものだ。あながち妖だけのせいとは限らんだろうがな」
冷めた言葉。
冷めた声で。
心が、まるでないみたい。
「見て見んことにはわからん。だから貴様に協力しろと言っているのだ」
「協力といったって、なにを」
「日が落ちたのち、妖が出そうなところに連れて行け」
「妖が出そうなところ・・・」
「物騒なところ、という意味だ」
なんで私が。