「この妖刀は、父上から譲り受けたものだ。父上にもそれが見えたらしい。あれは、人に憑りつき悪事を働く悪しきものだと教えられた」
「人に憑りつく妖・・・」
信じられない話だ。
それでも、目の前に信長さまというオカルトな存在がいて。
まるで真剣に話すさまを見てしまえば、それが真実なのだと思ってしまう。
「戦場には、それはそれは多くの妖がおったわ。あやつらも、見える俺が気に入らんのだろう。敵側に憑りつき俺を襲ってきた」
「そ、それで・・・どうしたんですか」
「もちろん斬った。その人間もろともな」
「え」
ゾクリ。
聞くんじゃなかった。
そう思った時にはもう遅かった。
当然のごとく発せられた言葉。
「当然だろう。妖に憑りつかれておらずとも、敵は敵。俺の邪魔をする者は斬り捨てる」
「そんな・・・」
「殺さねば殺される。そういう世だ」
私の、考えも常識も通用しない。
私が今まで信長さまに感じてきた恐怖は、きっとそのせい。