「あ、瀬名くん!」



放課後になって、私は終わってすぐに教室を飛び出した瀬名くんの背中を追った。
ハンカチの事、やっぱり気になって。
それに、大事なものなら返したくて。




「・・・何」

「あの、ハンカチの事・・・」

「・・・」



瀬名くんは、なにも言わず黙り込んだ。



「これ、瀬名くんのだって・・・」

「・・・」

「大事なものなんでしょう?一目で気づくくらい。これ、何年も前に貸してもらったハンカチなのに・・・」

「貸した・・・?」




怪訝な顔で瀬名くんが私を見た。
やっぱり、覚えてないのかな。

些細な一場面だったし。




「私が転んでけがをした時、このハンカチを差し出してくれたの、覚えてない?」

「怪我・・・?」

「うん・・・。中学校の時に、登校中に階段から落ちてケガをしたの。その時に・・・」




伺うように瀬名くんを見る。
でも、瀬名くんは考え込んだままピンとは来ていないようだった。