「俺が気づいたのだって、あの男があからさまな殺気を放ってたからだ」
「殺気・・・?」
「あの男、たぶん他でもうなにかやらかしてきてる」
「え・・・」
「だから妖に付け込まれたんだ」
それって、妖が憑りついたから犯罪を犯したわけじゃなくて、犯罪を犯したから妖に憑りつかれたってこと・・・。
そういえば、信長さまも言ってた。
妖はもともとそういう心を持ってる人に憑くって。
「私、・・・信長さまと妖退治を初めて、わかってたはずだったのに。どこか、信長さまも瀬名くんも強くて、負けることなんてないんだろうって・・・」
「負けるつもり、ないけど」
「うん。・・・でも、この間信長さまも妖にケガさせられたり、瀬名くんも倒れたり・・・、それで、ああ、完全無敵ってわけじゃないんだって・・・」
「・・・ふぅん」
「だから、もっと緊張感もっていかなくちゃって・・・。今思った」
「・・・今?」
拍子抜けしたような瀬名くんの表情。
ほんと、自覚が足りなかった。
なんとなく、私には関係ないって。
日が経つにつれ薄れていってたその気持ちは、やっぱり今でも私の中にあった。
どこか他人事で。
傍観者でいたいって思ってた。
そのツケが回ったんだって。