男は刀を鞘ごと抜き去るとドカッと床に座り込む。
すごく、邪魔な位置に。
まぁ、皆には見えてないみたいだからいいけど。
と思ったのはその時までで。
「疲れたー」
「結構歩かされたねー」
徐々にみんな帰ってきてバスに乗り込む。
そして、男をズカズカと通り過ぎていくのだ。
その光景が、不気味すぎてぞっとする。
だって、人を通り過ぎていくのよ。
怖ろしすぎる。
男は男で、自分がそんなところにいるのがいけないのに、いちいち不機嫌そうに眉を寄せ恐ろしい表情で通り過ぎるみんなを睨みつけるんだから。
「よーし、32名全員そろったなー」
はせちゃんがバスに乗り込んで叫ぶ。
いいえ、正確には33人です。
ひとり余計なものが乗ってまーす。
といいたい。
言って降ろしてもらえるなら降ろしてもらいたい。
私は小さくため息を吐いた。
とりあえず、無視だ無視。