「好きだのなんだのにあれほどまでに浮かれるとは、俺には理解できんな」

「好きな人に好きになってほしいっていうのは、人としてまっとうな感情だと思いますけど」

「まっとう・・・な」




港さんと別れた帰り道。
信長さまはしみじみとそう言った。



「そういえば、信長さまの時代は武将の人とかは特に、政略結婚が多かったんですよね」

「・・・まぁ、そうであろうな」

「信長さまも、いたんですよね?」

「ああ」




私はあまり詳しくないけど、なんだっけ。
美濃のお姫様と結婚したんだっけ?
側室もいたんだろうけど、その人が正室なんだったよね。



「好きじゃ、なかったんですか?」

「・・・そうだな。あれの事は、好いておった」

「あれ・・・」

「帰蝶の事だ」




帰蝶・・・。
あ、その人がお姫様の名前か。



「その人の事、好きだったんだ」

「あれは、他のどのおなごとも違った」




懐かしむように空を見上げる。