だけど教えてくれる気はあるのか「よく聞け」と、私にメモをとる様に促した。


「まず細やかな気遣い、せっかちでない穏やかな心、料理の基本のキを言っている脳みそ、それから……」

「もういいわよ!」

「なんだよ、せっかく教えてやってんだろ……」

「そういうのを屁理屈っていうのよ。どれも私にないものばかりじゃないっ」

「と、いうことだ……」


才賀は目を瞑る。

代わりに黒のピアスが、私を見ているようだった。