唇に翼の感触が残っている。

とてもあたたかかった。


泣かずには、いられなかった。

その時、鼻に涙とは違う水があたった。


雨だ。

―ザー・・・

みんな建物の中に入る。

私だけは、そんな雨のかな私は泣いた。

きっとこの雨は、翼の涙だ。

そう思うと嫌いな雨も好きになれた。

拭いても拭いても渇かない涙は、いつまでも続いた。

私は、いつまでも翼と一緒に泣いた。


―雨は、いつの間にか止んでいた。

顔を上げると、虹が私を見下ろしていた。


左手に付いた指輪を見て少し笑って私は、歩き出した。


―きっと、私は雨の日はずっと泣いていると思う。

悲しいわけじゃないんだ。

ただ、虹がみたいんだ。

空にかかる虹と、私の心にかかる虹。

虹は、君だから。

雨の日だけ、君と会える。