さっきのは、留守録。


翼に会いたい。

翼に触れたい。


私は、立ち上がり足を進めた。

あの場所へ・・・。



―プーップップー・・・。

クラクションが国道に飛び交う。

あの時は、あんなに静かだったのに・・・。

今、会いに行くよ・・・。

国道の近くにある大きな川の前にきた。

「ごめんね・・・」

ごめんね、翼。

ごめんね、赤ちゃん。

もう1歩進もうと片足を浮かした。

「霞・・・」

後ろで低い声が聞こえた。

この声は、紛れもないあの人の声。

「翼っ!!」

足を地に着け後ろを向いた。

彼は、優しく笑っていた。

「翼ッ!」

私は、走り出した。

ほら、やっぱりいるでしょ?

翼に、飛び付いた。

・・・・・あれ?

冷たい・・。

まるで氷を触っているみたいだ。

「つば・・・さ?」

体を離し翼を見た。

「会いたかった・・・」

私も、会いたかったよ。

「でも、行かなくちゃ」

どこに行くの?

せっかく会えたのに。

どうして、翼の後ろが見えるの?

「行かないで・・・私を1人にしないでよ・・・」

涙でさらに翼が見えなくなる。

「1人じゃない。赤ちゃんがいる。オレだっている」

「つばさ・・・」

声が詰まって上手く言葉にできない。

たくさんたくさん伝えたいことがあるのに。