「霞っ!」

それでも返事は返ってこない。

雨で視界が遮られる。

こんなどしゃ降りの中傘もささずに知らない名前を呼んでいる人に不信感をもったのか、周りの人は、オレを睨む。

でも、そんなことはどうでもよかった。

なぜ、迎えに来てくれたのに指輪を落として帰ったのか。

なぜ、こんなに探しているのに見つからないのか。

なぜ・・・・

いろんな疑問が頭の中で飛び交う。

そんな中、見慣れた淡いピンク色の傘が目に入った。

「霞ッ!!」

直感で霞だとわかった。

ピンクの傘は、10mほど先にいる。

「霞!」

肩を掴みこっちを向かせた。

やっぱり霞だ。

霞は、目にたくさんの涙を溜め今にも溢れだしそうだった。

「霞・・・」

「なんで、来るの!?」

オレの手と傘を置いて走り出した。