―プシュー

あの小さなドアからいっぺんに何人もの人が出ていく。

オレも静香さんと一緒にぎゅうぎゅうになりながらなんとか電車を出た。

マラソンがスタートした。

電車から出た人は、改札口を通り、ホームにずらりと並んだタクシーを奪っていく。

オレも、何も知らずに静香さんと改札口を通った。

「じゃあね、矢野くん」

静香さんもタクシーに乗り帰っていった。

オレは・・・どうしようか?

止むまで待つ?

走って帰る?

相変わらず降り続ける雨に頭を悩ます。

何気なく見回したホームにキラリ光るものを見つけた。

胸騒ぎがする。

何かいやなものを見てしまったような・・・。

近づくとそれは、徐々に姿をあらわした。

指輪・・・

“TSUBISA&KASUMI”

指輪の裏に彫られた名前を見て、頭よりも先に体が動き出した。