瑠璃はおそるおそるその男子生徒に声を
かけた。
「...?はい。」
こちらを見た顔は、とてつもなく整っていて、切れ長の目に色白で、背が高いその姿は、『カッコいい』や『イケメン』という
言葉よりまさに『綺麗』であった。
あまりの美しさに瑠璃は一瞬言葉を失った。
だが、優季は彼のその容姿を見て、ますます違和感を覚えていた。
この人、なんか...
「か、傘持ってないの?」
またしてもおそるおそる瑠璃が訊く。
「朝から雨だったから、持ってきていたん
だけど、盗まれちゃったみたいで。」
「止むまで待とうと思ったけど、止みそう
にないし、帰ろうかと思ってたとこだ
よ。」
「あ、あの...」
おずおずと口を開いたのは優季だった。
「これ、折り畳み傘...使って?
そのまま帰ったら、風邪引く。」
「え、でも悪いよ。
君に迷惑かけちゃうし。」
「わたしはこっちの傘あるから平気。
使ったら捨てちゃってもいいよ、
それ。」
「そんなことはしないよ。
けどありがとう。明日返す。」
「あ!じゃあクラス教え合ったら?
あなたも優季もクラス知ってたほうが
返すとき楽でしょ?」
「...ユウキ?」
「う、うん。四宮優季。2組...」
「竜崎(タツザキ)...7組だよ。」
「じゃ、ありがたく借りるね。
どうもありがとう。」
「い、いいえ。」
それだけ言うと、竜崎は雨の中へ歩き出した。