胸の奥がざわざわしてる。

こんなにも...
こんな偶然って...

「...四宮さん？」

「...なんでもない。
わたしのことはどう呼んでもいいよ。
でもわたしは今までどおり竜崎くんって
呼ぶ...それでもいい？」

ちょっとトゲがあっただろうか...
不安になってそっと、目線だけ上向かせて彼の様子を伺う。

「そ、そう？
じゃあ優季ちゃんって呼ぶね。
でもその顔はやめて。」

「え...？」

「上目遣いとか破壊力ありすぎだから。」

「！そんなこと...
...ないとおもうけど、それが本当なら
忘れてね。」

「え、なんで？」

「そういう顔は好きな人にしか
見られたくないから。」

「...あーはいはい。了解。
でも可愛かったよ、すごく。」

「からかわないでね...
じゃ、またね。」

手を振られている感じはした。
でも、敢えて振り返さなかった。

それはあの人が、どこまでもハルくんに似ていて、戸惑いを隠せなかったからでもあり、多くの人の前で親しい様子を見られたくなかったからでもあった。