「君は才能がある」
「ああ」
「我にもそう伺(うかが)える」
「君の名前は何という」
私は才能という言葉を初めて聞き疑問だらけだ。でも、今は知っても分からない。その中で私と同じ『人獣』に名を聞かれた。私はそのまま答えた。
「リュクリエ・ノノア・バルフス……。」
今思うと、こんなに長い名前をよく記憶していた自分に感心する。
「リュクリエ……か。我らと共にこい。……我の名前を言っておこう。我はアリューシェル・ストロフスカだ」
「アリューシェル…?」
「ああ。皆からはアリューセと呼ばれている」
「アリューセ様。そろそろ……」
「そうだな。リュクリエ行くぞ」
「うん!」


歩き続けていた中アリューセは止まった。止まった先には廃墟があった。ここが私が暮らしていく場所であった。
「ここが我らが住むところ。皆はリュクリエと同じで両親を亡くした者。両親に捨てられた者が大半だが、みずから親の元を去り我らの元へ来た者もいる。だが、共通点は『人獣』だ」
ある程度話が理解できた。
「ふーん」
「まあ、中に入ろうか。もう夜だしな」
「うん!」
今こんな事を思い出しているけれども、懐かしくて惜しい。

こんな事があって、平和な暮らしをしていた。
でも、私が7歳になる頃にはこのグループの仲間入りになった。
グループは『偽人』、『偽獣』に名を轟(とどろ)かせていた。

「リュクリエ…。君に初任務だ。」
「任務ですかっ?」
「ああ。今回のメンバーは、我…アリューセとフォルスタ、インガ、アスハとリュクリエの5人だ。」
「あれ、そのメンバーって、私を救ってくれた時の……?」
「ああ。よく覚えているな。やはり、リュクリエは記憶力も優れている」
「ありがとうございます!」
「んじゃ、ここで待機だ。3人を連れてくる」
「その必要はないっすよ!アリューセ様」
「インガ…ふっ流石だな」
「そんなことないっすよ」
「インガ様言葉を謹んで……」
「うっす。でも、アスハ様だって、硬いのもどうかと思うんすけど?」
「そうだけど……。あ、そうそう!リュクリエ様も今回よろしくお願いしますね」
「うん!ねぇ、なんで皆様をつけているの?」
「それはだな、それなり位が高い者には誰でも様をつけているんだ。リュクリエ…君も高いぞ」
「そうなの!?アリューセ…様はなんで様をつけないの?」
「そりゃあ、この『アントリュス』のボスだからな!」
「へぇ〜」
「まあ、リュクリエはもう少しなれてからでも大丈夫だろう」
「そうっすね」
「アリューセ様すみません!用を足していました!」
「問題はない」
「フォルスタ…様?」
「ん。リュクリエ様かっ!お久しぶりですこと!わたくしめを覚えていらっしゃいましょうか……」
「フォルスタさんですよね!私、しっかり覚えてます!」
「良かったです。今回はよろしくお願いします」
「うん!」
「では、行こうか。なまってはいないだろうな?」
「おっす」
「この前、任務で慣れておきました」
「わたくしも心配なく」
「大丈夫!」
「そうか……では」
そして、アリューセは龍のような姿へと変わった。
「やっていこうぜ!」
続いてインガも。
「ですね」
アスハさんも、
「任務成功を願います」
フォルスタさんも
そして、次は私。でも皆と違って私だけが龍のような姿ではなくて完璧な龍であることを理解していた。
「魔法驚き(マジックファンタスティック)!」
「今回は『偽人』地区、『ナモ』。ある組団の全滅。以前にその組団のメンバーをある程度駆逐はしたが、様子を見るために一次保留にしていた任務だ」
「もしかしてそれは……」
「アスハには辛いかもしれないが……『エトロムス組』。昔全滅させた『マハス組』と深い関係にある」
「私にはもう関係はありません」
「ならば、ひるむなよ」
「はいっ」
「では」
アリューセが先頭に立ち、渦巻きがたちそうなスピードで飛んで行った。私は飛ぶのには自身があった。いっつも訓練していて、アリューセにも認めてもらえた一つの特技だから。
「では、リュクリエいきまーす!」
アリューセが通った道を私は空中の空気をも貫きながら進んだ。
「リュクリエ様凄いっすなぁ」
「時間がもったいないです。いきましょう」
「そうですね。アリューセ様を待たせるわけにはいかないですしね」
そして残りの3人も私達を追うようにして飛んだ。