ぼくは問題集を閉じて、くたりと横たわるトートバッグの上に重ねた。


トートバッグの口から朱色の分厚い本がのぞいている。


大学入試の過去問集だ。


麗は医学部医学科を志望している。



「研究医になりたい、か」



 筋ジストロフィーの治療法を確立するための研究をしたいのだ、と、


朝綺と出会った日の夜、麗はぼくの前で宣言した。



 朝綺の右手の人差し指と中指が、椅子の肘掛の上でタップダンスをしている。


朝綺は、まつげを伏せてそれを見つめながら、頬に浅いえくぼをつくった。