「飛び級とか、優遇措置とか、あればいいのにな。麗ちゃんも、おれも。


麗ちゃんの学力なら、今の時点でも十分、専門的な研究にだってついていけるだろ?


おれはさっさと卒業したい。生きてるうちに、本当は修士号くらい取りたいんだ」



 大学を二十二歳で卒業して、大学院の修士課程は二年間。


二十四歳になるころ、朝綺の体は、どうなっているんだろう?



 麗が投げ出した問題集は、ページが開かれたままだ。


数学Ⅲなんて教科は、文系のぼくには縁がなかった。


余白という余白に、ボールペンで数式が書き込まれている。


こんな複雑な計算が、麗の進みたい道の先で何かの役に立つんだろうか。