「もう本当に性格悪い。
なんでこんな人がモテるのかな〜」



「まあ、顔がイケメンだから?」




「自分で言っちゃうところがうざいですね。」




「お前、それはひどくね?」



えりさんの言うように、真壁さんはモテる。真壁さん目的で、このお店に来る人も多いし、声をかけられているのをよく見かける。



確かに、顔はかっこいいと思う。今更流行りの塩顔男子ってやつ。



でも、性格に難がある。



「そうですか?
わたしそろそろ帰りますね。」



スマホの時刻は22:30をまわっていた。



「むーちゃん、歩きでしょ?
1人で大丈夫?」



「いつものことなんで、大丈夫です!
じゃあ、お疲れ様でした」




「気をつけてね〜」




というえりさんの声に笑顔を返し、わたしはスタッフルームを後にした。



(おぉ、寒い)



最近少し暖かくなってきたと思っていたが、夜はまだ寒い。



風が冷たい。




「おい。ツナ待て」



寒い夜道をトボトボ歩いている後ろから、ツナと呼ばれた。



そんなの1人しかいない。



「なんで先帰るわけ?
今日俺、21時上がりだったんだけど」



後ろを振り返ると、少し不機嫌な真壁さんがこちらを睨んでいた。



「確かそうでしたね」



だから何だよ!って心の中で思っていた矢先、はあーと溜息をつかれた。



「お前が終わるの待ってたんだけど。
なんで1人で帰るわけ?」


(あぁ、不意打ち)



この人は何でこんなことを真顔で言うんだろう。



「そんなの知りませんでしたし。
何かわたしに用事ですか?」



そしてなんでわたしは、こんなに可愛くないのだろう。



「俺のチョコは?」



あるんでしょ?的な目をして、


頂戴と言わんばかりに両手を差し出すこの男を



なんでわたしは



(好きなんだろう)



「チョコのためにわざわざ待ってたんですか?」




「お前明日休みだし、なんで皆貰ってるのに俺にはないのかな〜ナツナちゃん」




ああ、怒ってる。真壁さんは今怒ってらっしゃる。