その日は水沢に誘われて2人で帰った。
最初に口を開いたのは水沢だった。
「あの、いろいろありがとう。
相川くんがいてくれて良かった」
そう言って水沢はまた笑う。
やはり・・哀しそうに。寂しそうに。
「−・・大丈夫か?」
水沢のことだから大丈夫じゃない、と
答えるにきまってる。
だけど俺はそれしか言えなかった。
「うん、大丈夫」
やっぱり、水沢はそう答える。
「嘘・・つくな」
俺は足を止めて、水沢を見つめる。
水沢も俺を真っ直ぐに見つめた。
「相川くんには嘘、つけないね。
本当はね?全然大丈夫じゃないの。
お父さんがいなくなって・・
お母さんもどこか寂しそうで。
あたしの心にも穴が空いたみたいで
何をしてても寂しくて。・・哀しくて」
俺は無意識のうちに
水沢を抱きしめていた。
「俺が埋めるよ、心に空いた穴。
お父さんって存在の足元にも
及ばないかもしれない。
でも。
俺が水沢を守るから。
また水沢が心から笑えるように
ずっと傍で見守ってるから」
俺は強い決意を込めて腕の力を強めた。
「・・−うん」
水沢は小さく頷いた。
水沢は泣いていた。
笑いながら・・泣いていた。
俺は水沢の涙を拭って
優しい優しいキスをした。