俺はタクシーを呼び、
水沢を支えながらタクシーに乗る。
倒れそうなくらいふらふらしている
水沢の細い体を支えながら。
不思議なことに水沢の目から
涙は流れていなかった。
病院に着くと、水沢のお母さんがいた。
水沢と全体的に似た綺麗な人だった。
俺はお母さんに軽く頭を下げ
高校の友人の相川です、と告げる。
お母さんの目は少し赤くなっていた。
たくさん、泣いたのだろう。
「あや、相川くんもこちらに・・」
水沢のお母さんに連れられて
着いた先は霊安室。
水沢のお父さんが眠っている場所。
部外者の俺が
この部屋に入っていいのか、と
霊安室の前で立ち止まった。
そんな俺の左手に、
小さく震えている水沢の手が触れる。
「・・お願い、一緒に来て・・」
水沢は小さな声で俺に言う。
俺は水沢の手を握りしめ
しっかりと頷き、足を踏み入れた。