「…っ俊くんっ!!」

「沙良ちゃんっ待って!」


2人が病室に走って行ったのに、どうしても、私は行く事ができなかった。


俊くんに会うのが怖いとかじゃなく、

頭がただ真っ白で床にペタンと座ってしまった。



記憶喪失?なんで!?ウソじゃないの…?


ただその言葉しか頭の中になかった。


「先生、俊の記憶は戻るんでしょうか?」


俊くんのおじいさんの声が聞こえてくる。


「そう…ですね…」


数秒の無言が私には永遠に感じられる。



「戻れると思います。」


その1言で私の顔は明るくなった。



でも…


「戻る確率は、たいへん小さいです。」