佐橋先輩は文庫本を大事そうにワンショルダーのバッグにしまい、書店を出て行った。

その姿はやっぱり、我が校の王子様で有名人の彼なんだけど、以前とは違って見える。

それは私が彼の秘密を知ってしまったからかな。

恋愛小説好きな佐橋先輩、本人は絶対バレたくないみたいだし、私も喋る気なんかないけれど、前より親近感を持てていいなと思う。


その日のバイトを夕方で上がるまで、私はウキウキした気分を隠せなかった。