数分で電車は駅につき、俺は大きなリュックを背負って電車から降りた。

懐かしい風の匂いと、駅の雰囲気。
そんな感動的なものに涙腺を刺激されたが、俺は歩みを進めた。

改札を出たあたりでキョロキョロと周りを見渡す。

たしか、友達の幸香が改札前で待っていてくれる手筈だ。

「ゆっと、ゆっと」

突如後ろから声を掛けられる。

俺の事をゆっと、なんて呼ぶ奴はあいつらしかいない。

俺は振り返って、思い描いていた人物に笑いかけた。

「久しぶり、柚希」

#


「昔みたいにゆずちゃんって呼ぶのかと期待したのに!」

車をはしらせながら柚希が言う。

「馬鹿、いつまでも高校生気分でいらんねーだろ」

そういうと柚希はにやりと笑った。

和葉 柚希。
俺がこの島にいた時の、数少ない友達だ。

…ちなみに、女である。