春樹が倒れた。


俺はすっかり疎遠になった春樹の母さんからそう聞いただけだった。


段々と建物が少なくなって行き、同時に車内の人も少なくなっていく。

そんな電車に揺られながら、俺…杉野裕太は携帯を手にした。


「…クソ、春樹…」

くしゃりと髪の毛を触っては直しを繰り返すと、段々気持ちが落ち着いて来た。


無意識に携帯は春樹の写真を写しており、俺はひとつひとつを見て行った。

写真のなかの春樹は無邪気で、倒れたなんて感じさせない様に笑っている。

俺は、小さく舌打ちをした。

隣に居た小学生がビクッと肩を揺らした。
…別に何もしねぇよ。