蕩けるような情事に、必要だったもの。
柊介が、使っていたはずのもの。



“そろそろいるかな、と思って”


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______________はっ!!!!!!!





「俺なんて、見当たらないからダッシュで買いに行こうかと、」

『すとーーーーーーーーっぷ!!!!!!』


蘇る、エリーの甘い吐息。私を見下ろす、濡れた瞳。

十分焦れていた、私の最奥地。



『大丈夫!それは大丈夫だった!』


何が大丈夫なのか自分でも分からない。
だけど、ショッキングピンクに染まる記憶を振り払おうと、慌てて首を振る。


「大丈夫って、なに。笑」

『オッケーオッケー、もうこの話は終わりねっ!!』


どうしよう、夢中だったから分からなかったけど。
目が覚めてみると、エリーとキスして、キスの向こう側まで見えてしまったなんて恥ずかしい。
脇汗かいてきた!涙


コーヒー淹れる、と立ち上がったエリーの背中を目で追う。
昨日の男っぽいファッションも素敵だったけど。こういう、緩めの部屋着姿もグッとくる。あれ、萌え袖っていうんだよね?

眼鏡も初めて見たけれど。エリーの華奢な輪郭に丸いフレームがよく合ってて、可愛いな・・・




「ブラックだけどいい?」


エリーが連れてきた二つのマグカップ。ペアじゃないところに、思わずキュンと上がる。

ペアじゃないってことは。
ペアを買う相手がいなかったってことだもんね。



『ありがと、』

両手で温もりを受け取れば、頭頂部に降りてきた手の平。

見上げる斜め上には、爽やかに微笑む彼がいて。

キラキラキラ。後光が射してるよ。
完璧な王子様スマイルだな。嗚呼、エリーらしい____________




「ゴム無くてごめんね?ちゃんと用意しとくから、今度は安心しておいで。」

『なっ!!!!!!!!!!』


不意打ちの、ピンク発言。出来立てのコーヒーは声と一緒に喉から飛び出て、白いブラウスに散った。


弾けたように笑うエリー。卑猥な思考があるなんてとても思えない、眩しいほどの透明感。


汗と涙と、吹き出したコーヒー。
柊介に着て見せたかった白いレースのブラウスは、エリーと過ごす間にすっかり染まった。



「吹くこたないだろ。笑」


どんどん、どんどん。

私の白は、彼色に染まっていく。




『だっ、だってそんな真正直なっ・・・!』

「だってそうじゃん。あったらシテたし。」

『だからっ!!汗』



知らなかった感情は、知らなかったエリーといるからだ。

正直で、男っぽくて、飾らない。


「好きな人が横で寝てるって、拷問だよ?おかげで寝不足。」

『・・・エリー、あたし、』

「今すぐ応えてもらうつもりはない。どうせもう、諦められないし。」



私に触れる指先は、間違いなく温かい。








テレビをつける横顔に、王子様らしからぬ大欠伸。襟足に跳ねた寝癖の跡。

いちいち騒ぐ心音の理由はまだ、分からないけれど。


昨日までのエリーよりも。

今日からのエリーの方が、ずっと好き。