ハルアラシ♯エリーside
“間違えた”
その意味を君は知らない。
どんな愚かな間違いを、俺が見過ごしたのか。
無防備な君が、罠にかかったあの夜のことを。
俺の目の前で、君はコバルトブルーに染められて。
あっという間に沈んでいった。
浮かばなかった、まさかあの人が来ていたなんて。
柊介さんを降ろしたタクシーの中で、あの人の蒼が待ち構えていたなんて。
何も出来ずに立ち尽くした、春雨の夜。
耳から離れない、アスファルトを打つ雨の音。
どこの罠にたち返れば、君を取り戻せる?
どこの夜に舞い戻れば、君は君のままでいられた?
剥がれかけたブランケットを、細い肩にかけ直す。
月明かりに浮かぶ頬に、涙の跡。
泣かせたくなんてなかったはずなのに、涙の理由に欲情した。
一緒にいたいと震える声に、頭がおかしくなりそうだった。
君に出会ってから、世の中に氾濫する恋に纏わる言葉の意味を、身をもって知って行く。
携帯が震える。
表示された画面を確認して、君を起こさないようにそっとソファを抜け出す。
「・・・もしもし。お久しぶりです。」
あの夜の罠にたち返らないといけないのは俺自身だ。
もう二度と、君を見失わない。