思わず引きそうになった顎先を。
上手に捕まえたのは、涼しい指先。
エリーってこんな風にキスするんだ、なんて。
一瞬過ぎった照れくささは、その熱量に吹き飛ばされた。
唇から、身体が支配されていくみたい。
涙でベタベタの頬も、マスカラの落ちた目元も。
一つ一つ私の手を離れて、エリーの物になっていく。
感情が、流れ込んでくる。気持ちが繋がった箇所から擦れてヒリつく。
引き上げられていくばかりの体温。
身体の境を見失いそうになる、濃い落とし穴。
エリーの唇が、次のキスのために閉じる度待ちきれない胸が鳴いて。
もっともっと、深く深く。
もっともっと、強く強く。
不思議。
まるで最初っからそうだったかのように、私たちはすっかりオトコとオンナで。
壁に追われるようにキスを受けていたけれど、どんどん砕けていく腰はもう限界で。
体勢、きついかも。抱き留めてくれてるエリーのこの腕も、きっと辛いはず。
それなのにちっとも、離れたくない。
そう思っていた頃、フワリと身体が浮いた。慌てて側にあった首に手を回すと、景色が玄関からリビングへと流れていく。
『あっ、エリー、私、靴っ・・・!』
いつの間に自分だけ脱ぎ捨てたのか、エリーはスニーカー姿の私を部屋に運んで行く。
まさか、行き先はベッド・・・?!
どうしよう、嫌じゃないけどまだそこまでの覚悟は!汗
慌てる私を取りなすように、髪にキスを落とす。その仕草に思わず、さらにギュッとしがみ付いてしまう。
ああ、なんかもう。
今夜はもう、それでもいいかも。
陶酔しかけた私が、ゆっくり降ろされたのはソファの上。
見上げる、発熱した瞳。無意識に今度は私がエリーの手首を引いて。
降ってきたエリーは、忽ちに加速して。
『エリッ・・・もうちょっと、ゆっくり・・・』
キスだけなのに、呼吸を逃してる。
この眩暈は、酸欠か、恋仕掛けか。
「やめる?」
分からないままに、首を振る。
『やめない。』
再び始まる途方も無い深入りの寸前。
『ねぇ、けどもうちょっとゆっくり、』
「無理__________」
低い囁きに塞がれた筈の唇は、その先を探して大きく開く。
私たちは、6年越しにもう一度出会う。
風味絶佳な夜が更けていく。