驚くほど、同じところで笑えた。
エリーが何気なくつけたテレビのお笑い番組。私たちは一様に同じタイミングで吹き出した。
「やべー。笑 超ウケる!」
私より先に、私より大きな声で笑ってくれるから。
安心して、お腹を抱えて転げ回れた。
隣に、一緒に笑ってくれる人がいるって嬉しい。
久々だな、この感じ。
テーブルの上、焼き鳥はとうの昔に食べ切って。倒れたビールの空き缶がもう5、6本。
ちょっぴり酔っ払ったかも。ふんわり気持ちが良くて、少し眠たくなってきた。。
今日が土曜日でよかったなぁ。
明日もお休み。朝、思いっきり朝寝坊しちゃお。。
それにしても、エリーってよく笑うなぁ。
イケメンで優しくて、友達思いで子供好き。
仕事だって出来るし、将来有望。
最高じゃん。眞子はこのエリーのどこが不満なの?
眞子は____。
眞子。
また胸の奥に、引き下げられるような重みを感じた。
なんだか今日は、眞子を思うと胸が重い。
なんだろう、これ。罪悪感?
眞子に言わずに、エリーと会ってる罪悪感?
明日言うもん、別に。
ふと、抱えた膝小僧に頬をつけてぼんやりエリーを眺めていたら。
柔らかい視線に捕らえられた。
「そろそろ帰る?」
『えっ、帰らない!』
何故か慌てて、まだここにいる意志を表明してしまう。
「帰んないの?眠そうじゃん。笑」
『寝たらキスする?』
売り言葉に買い言葉。
見開かれたエリーの丸い目に、自分の発した言葉の重さに気づかされる。
な、なに言ってんだ!私は!!汗
酔ってる。先日の一件と記憶が混同してる!
『なんてね、うそだ、』
「するよ?」
ゆらりと、視界が暗くなって。
「だから寝んなよ。」
囁いた低い声が、僅かな距離を埋める。
香りと色気と、触れられる距離で揺れる前髪。
立ち込めるエリーの色に一瞬で圧倒される。
座っているのに押し倒されるような。
凄まじい眩暈。
『はい・・・。』
喉から振り絞った声が、やっと返事を生んだ時。
エリーは立ち上がってキッチンに向かった。
びっくり、した・・・。
自分があんな発言をしたこともだけど、今のエリーの表情。
あんなエリーの顔、見た事ない______
心臓が煩い。思考回路が破裂しそう。
なんか変。やっぱり今日は、なんか変!
濃度が変わったように感じるこの部屋の空気。
雰囲気を変えようと、エリーの背中を追い掛ける。
『何してるの〜?』
努めて明るく出した声は、お笑い番組からニュースに変わったテレビ音をBGMに、わざとらしく響いた。