黒とウッディな木目を基調としたインテリア。
華美でもなく、過剰な装飾品があるわけでもなく。
適当に座って、と声をかけられればすぐに腰を下ろす場所が見つかるような。居心地のいいその部屋は、なんだかとてもエリーらしい気がした。
窓際に、背の高い観葉植物。
ぽってりした肉厚な葉っぱが可愛い。うちにも植物ないのに、男の人の部屋で珍しいな____
“男の人の部屋”
葉っぱに触れようとした手を、慌てて引っ込める。
勢いでここまで来ちゃったけど!よく考えたら、ここは男の人の部屋!!!汗
仕事用のカバンに、タグ・ホイヤーの腕時計。
サイドテーブルの上に置かれた鼈甲のメガネ。
そこかしこに感じる、エリーの香り。
やばい、発汗してきた。。
「ビールでいい?」
エリーの声に振り向くと、片手に二本の缶と、もう片方の手に焼き鳥を広げたお皿を持って。
『ありがとう、お気遣いなく。』
エリーは、少し離れた場所に腰を下ろす。
ちゃんと食事をパックからあけてお皿に並べるんだ。
珍しいな、男の人なのに____
って、“男の人”!!汗
『め、めずらしいね、ちゃんとパックからあけるんだ!』
「え?」
『焼き鳥。ちゃんとお皿に出すんだなと思って。私、面倒な時はそのまま食べちゃうよ。』
「ああ。笑
俺も普段はそうだよ。藤澤じゃなかったらやらないよ。」
キュウ・・・
だめ!なにこの音!!!涙
缶ビールが息を吐く音で顔を上げる。
「はい。」
胡座をかいたエリーから、開けてくれたビールを受け取る。
少しぶつかっただけの指先に電気が走る。
さっきはあんなにしっかり、握り合っていたのに。
煮詰まった思考回路を冷まそうと、冷たいビールを煽った。
何度も、本当に病院に向かわなくていいのか聞かれた。だけど冷静になればなるほど、エリーの最初の言葉通りだと思った。
もしも柊介自身に何かあったなら、あんなに執拗に電話してくるなんて出来なかったはず。
あんなにかけてこられたんだもん。柊介は無事だっていう証拠。
まぁ、これは自分への言い訳のような気もしたけれど。
たとえ、柊介に何かあったんだとしても。
私はエリーと、一緒にいたいと感じた。
『・・・うまっ!なにこれ、このレバーめちゃくちゃ美味しい!』
「だろ?」
『すごいね、トロける!・・・んっ、こっちのササミも美味しい!!』
冷めてしまってはいるけれど。どの串も、エリーの言った通り驚くほど味が深くて美味しくて。
「よかった。」
そう笑うエリーの横顔に、また胸が鳴る。
目尻の笑い皺。私、無条件にエリーのこれが好き。
エリーの笑顔が好き。
「こっちも食ってみて。この柚子胡椒つけると美味いよ。」
エリーの低い声が好き。
エリーの・・・
エリー。
首を振る。
私、何を考えてるんだろう。
ベーコントマトのミニトマトが、鈍い音を立てて舌の上で温く広がった。