もう着いたってこと?慌てて小走りで向かう。
エリーの隣に並んで、眼下に広がる景色を見下ろすと________




『えっ、すごい!なにこれ!!』


河原に隣接する広いグラウンドで。
子供________?たちが、色とりどりのユニフォームを来て、ボールを追って走り回ってる。
なにこれ?運動会?!



「たけひとー!」

エ「おお!おはよー。」


エリーの形の良い後頭部越しに見える、小さな子供を抱いた男の人。


「早かったな。悪いな、休みのとこ。」

エ「ううん。あ、ジュースって30本で足りんのかな?」


たけー、と子供が手を伸ばすと。
エリーはクーラーボックスとスポーツバッグを足元に置いて、その子を男の人から抱き上げた。

ふと、両手が空いた男の人と目が合う。



「ねぇ、もしや藤澤さん?」

『あ、ふ、藤澤です。おはようございます・・・。』

エ「藤澤、こいつは柳田颯人。俺の中学からの同級生。サッカークラブのコーチやってるんだ。
ヤナ、こちら藤澤さん。」


“もしや藤澤さん”って、なに??
柳田さんの第一声が腑に落ちない。


柳「おお!おはようございます。」


だけど、柳田さんの日に焼けた笑顔は、エリーに負けず劣らず大きくて。
その眩しさに不信を吹き飛ばされた私は、慌てて頭を下げた。


柳「・・・、・・・」

エ「うるせぇ。笑」


コソコソ、だけどとても楽しそうにつつきあう二人は、子供がふざけてるみたいで。
エリーのこんな無邪気な姿を見るのも初めてで、また胸が鳴った。


柳「藤澤さん、このチビはうちの雄(ゆう)。俺の長男です。よろしくね。」


柳田さんに頭をぐりぐりされる雄くんは、顔を顰めてエリーの首元にしがみ付く。


雄「もー、ぱぱ、やー!」


エリーが肩を震わせて笑う。
自分に縋る雄くんが可愛くて堪らないという風に。オムツで膨らんだお尻まで、ギュッと深く抱いて。





きゅう・・・



何だか、さっきまでより一段高く、胸が鳴いた。

イケメン×子供。
最強の図式だって、眞子が言ってたっけ。。





エ「藤澤、分かった?」

『はっ、はい?』


ああ、もう。
いつも十分眩しいエリーが、あり得ないくらい輝いて見える。


エ「今日は、俺が総監督にサッカーを教える日。」














エリーのこの台詞で始まった春の土曜日。

私は、胸の鼓動を振り切らすことになる。


それは、生まれて初めて味合う________




ハルアラシ。