味の保証はできないよ、と差し出すと。
贅沢言わない、と笑った。
「美味い!野菜入ってる。久々生野菜食べた気がする。
うわ〜なんか俺、みるみる健康になってきた!」
『大袈裟だなぁ。笑』
こんなに喜んでくれるなら、もっとちゃんとしたやつ作ればよかった。それでも嬉しくて、口元が緩む。
小さな水筒から、飴色の紅茶をコップに注ぐ。今のエリーなら、まだ湯気の上がるこれも一気飲みしてしまいそうで。『熱いからね!』と念押しながら渡した。
「ご馳走さまでした。」
膝の上、パン屑の落ちたサランラップに丁寧に手を合わせる。
いいなぁ。エリーの、こういうちゃんとしたところ。
「よし、腹ごしらえも万全だしがんばろう。」
『えっ、降りるの?』
大きな川横の駐車場。エリーの食事のためだけに寄ったのだと思ってた。
エリーに倣って慌てて車を降りれば。さっさとトランクに回り、軽々とスポーツバッグやらクーラーボックスやら降ろす背中。
スポーツバッグ?クーラーボックス?
なんでなんで???
今日ここで私たち何をするの??
ポカンとしていると、「分かった?」と振り返ったエリーは悪戯に微笑んだ。
『全然分かんないんだけど・・・。
今日何するの?運動?』
「俺はね。藤澤は勉強。」
勉強?!ますます分かんない!!汗
トランクの閉まる音と車がロックされた音で、歩き出すエリーの背中を追う。
駐車場を抜けて舗装された小道を歩く。
なんか、川に近づいて行ってる気がする・・・?
なんだろ?バーベキューとか?けどこんな朝から??
キョロキョロしていたら、エリーの背中に遅れる。
荷物、沢山持ってる。どれか手伝った方がいいかな。
だけど、あんな量でも一つも私に渡さない“扱い”が心地いい。
それにしても、エリーの背中。
思ってたより筋肉質なんだな。半袖のTシャツから覗く二本の腕にも適度な盛り上がりがあって。
柊介の締まった分厚さとは違う。
八坂さんの、彫刻みたいな筋肉のつき方とも違う。
これが細マッチョ、っていうのかな。眞子の好きなやつだ。
眞子は、一体このエリーのどこがダメなんだろう?
エリーの片思いは、いつか成就する日が来るんだろうか。
せっかちな眞子と穏やかなエリー。きっと二人、お似合いなのに________
何故か急にチクチクしだした胸に首を傾げていると。
前方のエリーが、振り返ってるのが見えた。河原に降りる土手の手前、またあの悪戯な笑顔で。