ん?
眞「そーだよー!エリーに教われば?!」
眞子がよそ見しながら絞ったレモンは見事廣井さんの頬に命中して、廣井さんは顔を顰めた。
眞「エリーだったら経験豊富だもんね。初めてならエリーがいいよ!」
廣「なんか言い方おかしくないか?汗」
エ「俺で良ければ、総監督。」
『なんで?』
エ「え?」
だって、その“総監督”というフレーズは。
牧JAPANのメンバーしか・・・
『なんでエリーが、私を総監督って知ってるの?』
眞「まじ?!十和、そこからー?!」
今度は、レモンの滴は廣井さんの眼球を直撃したようで。廣井さんは小さな叫びをあげてクラッシュした。
眞「エリーも今回のメンバーだよ?メンバー表送られてきたんじゃないの?」
『送られて、きてたけど・・・』
そういえば、あのメンバー表最後まで目を通してない。
“総監督”の表記に熱り立って、牧さんに噛み付いて________。
だけど、やっぱりなんでエリー???
『エリーは海営じゃないのに。』
目を丸くしていたエリーの横で、お絞りを目に当てたままの廣井さんが回答する。
廣「江里はスカウトだよ。」
『スカウト?』
眞「エリーは牧役員にスカウトされたんだよ。」
『なんで?』
お絞りから目を上げた廣井さんの瞳は、可哀想なくらい真っ赤でシパシパしていた。
廣「江里は、埼玉県選抜だったらしい。」
エ「中学の頃っすけどね。」
涼しい顔でグラスをあおるエリーの前で、今度は私が目を丸くする番。
『け、けんせんばつ?!?!』
嘘!すごい!県選抜って結構なやつだよね?!汗
『あれ?けどラクロスは?ラクロスも主将で________』
エ「中学まではサッカー、高校からラクロスやったんだ。」
眞「エリーってホンット何でもできるよねぇ〜!」
眞子が鋏に手を伸ばす動作で、廣井さんはビクリとして身構えた。
眞「もう、さっきからなに?怒
レモンが飛んだくらいでそんなにビクビクしないでもらえます?」
廣「気づいてたんなら謝れっ!汗」
眞子がワァワァ切り出す声を隣に聞きながら。ソッと視線を上げるとエリーの前髪が風に揺れた。
ぼんやり視線を泳がせながら、グラスを口元へ。喉仏が大きく動く。無防備を兼ね備えた色気は最強。
束の間見惚れた視線は、器用な仕草で掬われる。
エ「どした?」
『エリーってなんでそんなに何でもできるの?』
エ「はぁ?笑」
大きな笑い皺に、またグッと胸が締まった。
エ「出来ないことばっかりだよ、俺なんて。思い通りにならないことばっかりだ。」
『そうなの?例えば??』
エ「もういいよ、俺の話は。
それより________例の件は、落ち着いてる?」
“例の件”
エリーらしいオブラート。
『あ・・・うーん・・・。それがね・・・』