そのニュースが駆け巡ったのは、奇しくも社内広報誌「SUN!」の。

待ちに待たれた、今年度のイケダンランキング発表と同日だった。




「藤澤さん、内線鳴ってるわよ?」

『いや、ちょっともう無理です・・・。』


溜め息を吐いた先輩が、代わりにピック。
席を外していると伝えてくれる姿に、デスクに伏せたまま頭を下げる。


社内に、こんなに知り合いがいたかと自分を疑う。
皆の関心は、ただ一つ。




“清宮柊介との婚約破棄について”











自分が参加しない役員会議の日は、朝から穏やかで。
数分ごとに牧役員に呼ばれることもない。ゆっくり紅茶なんて嗜みながら、仕事も捗ることこの上なし。

参加を免れた先輩たちも、ネイルオイルなんて塗りながら「SUN!」の社内便到着を待ち侘びて。
気も早く、八坂さんが今年殿堂入りした後は、誰がトップを飾るのかなんて来年の予想にまで花を咲かせていた。



内線が鳴る。発信者番号から、1階の受付だと悟る。
眞子からだ。
暢気に、ランチの約束だと決めつけて。




『もしもし?今日はね、時間通りに出れそうだよ。』

“ニュース速報!!”


出た瞬間に叫ばれて、言葉は聞き取れなかった。


『え?何?』

“だからニュース速報!!”


思わず、受話器を耳から外して見つめてしまう。意味が全く、分からない。



『何言ってるの?眞子だよね?』

“清宮さんが、婚約破棄したこと話した!”



ああ・・・。
まぁ、知られるのは時間の問題だと思ってたし。柊介にだって友達はいるだろうし、話したい時もあるよね。



『うん。まぁ、仕方ないよね。』

“かい、かいぎ!!”

『カイ?カイリ?』



何故か息も切れる眞子が、大きく息を整える音が聞こえた。



“会議!役員会議で、今話してるって!”




声が意味に変換されるのに、数秒がかかった。


そし、て。





『嘘でしょ!!!!!!!』


変換が終わると同時に、私は発狂した。

先輩達が一様に振り返る。だけど、構ってなんていられない!汗



『役員会議?!今日の?!なんで?!えっ、今話してるって何?!?!』

“分からん!ただ、居合わせた人の情報によると、”



噴き出した、熱い汗も。




“牧さんが、それについて怒鳴ったって。”




一瞬で、凍り付く。