エレベーターを並び待つ、深夜のフロア。
続く言葉に落胆した。
「なんか話があったんだろ?」
単純に、飲みに誘われたのかと思った。
それが、まだ話の先を窺われているなんて。
「まぁ、もうこんな時間だから店が限られるけど。」
『あのさ、エリー。』
ムクれたくないのに。
頬が釣り上がるのを、自分でも感じる。
『私の話は以上で終わりだよ?何度も言うけど。』
「そうだ、」
手を絡められる感触。
甘くあやすように。
「俺んち来る?」
人の話を聞けっ!!!
というか、この暗がりでそんな綺麗な顔で微笑まないで!!!/////
到着を知らせるエレベーターの呼び鈴。
離れる瞬間、キュッと強く握ってからエリーは手を離した。
松葉杖をつきながらも、先に乗り込んで私のために扉を押さえる。
・・・なんで、こうも私に完璧なのか。
照れ臭くて甘ったるい。
唇を噛んで、私も小さな室に並んだ。
深夜を降りて行くエレベーターの中。
色を変えていく階数字を二人で見上げる。
不意に欠伸が溢れた。
なんか疲れたかも。。
柊介に明日香ちゃんに、美紅ちゃんに眞子。
走って来た深夜のオフィス。
なかなかに長かった1日。
「ちゃんと分かってるから。」
飛びかけた意識は、エリーの声に引き戻された。
『え?』
「俺なりに、理解してるつもり。」
やばい、話を聞いてなかったのかもしれない。
エリーの言葉の意味に、付いていけない。
「だから、これと言ってスタンスを変えるつもりもないし。」
それが、私を指す意だと。
「藤澤が100%俺を選んでくれるまで、ちゃんと待つから。」
気付いた時には、一気に頬が燃えた。
なんでこうも、完璧なのか。
エリーはつくづくに、私を間違えない。
『ありがとう・・・。』
本当はもっと話したいのに。
それ以外が、全く浮かんでこない。
「だからさ、なんかあるんだったら遠慮なく話してよ。“元カレ”の愚痴でも打ち明け話でも。」
『元カレ、って・・・。』
わざとらしい言い回しに、思わず吹き出す。
見上げる瞳の優しさに。
気遣われたんだと、悟る。
そうか。
エリーには、私の駆けてきた意図が伝わっていないんじゃなくて。
柊介と別れた痛みの方を、予感してるんだ。