まずは思い浮かぶ、営業推進部のフロアから巡る。



見慣れた定位置にエリーの姿はなくて。それならばと、企画部に足先を返す。

一切人気のない暗闇に、思わず息を飲んだけれど。エリーがいると信じて、震える足を踏み出す。





一つ一つ、宛先を辿りながら思う。
一つ一つ、当てが外れる度に思う。

もしかしたら、エリーもずっとこうだったんじゃないかと。




いつも正解ばかりで、差し出される度に驚いた。
だけど、その正解に辿り着くまでのエリーを私は知らない。

優しくて温かくて賢くて。
完璧なエリーの裏に、どんな葛藤があった?


当の本人の、私が。

その葛藤に見向きもしなければ、それはただの犠牲だ。





想いを告白された夜。
私はずっと、エリーを見誤ってきたと言われた。

キスの温度、優しさ、手の平の温もり。

もう二度と、間違えたくないと思った。
この人の温かさに、ちゃんと向き合って生きようと決めたのに。


私はまた、甘えた。
エリーから目を離して、知らぬ間に考えることをやめて。

不誠実で狡くて甘ったれ。
こんな私、ちっともエリーに相応しくない。




だから、もう一度。
ちゃんと変えて、生きてみたい。

応えられるかなんて、まだ分からない。
分からないうちは、適当に応えを決めたくない。

エリーのことは勿論“大好き”。
だけど、この想いがエリーからのそれに見合うのかは分からない。


ちゃんと分かるまで確かめたい。
それが、6年もの時をかけてくれた想いへの、誠実だと思うから。








柊介に、私を追うよう頼んだエリーの痛みを思った。
それに比べたら、こんな夜のオフィスなんて怖くないっ!!!!!!!汗


折れそうな足を奮い立たせて、エレベーターの呼び出しボタンを押した。
階を変えよう。


今夜は、絶対に。

私がエリーの正解を見つけるんだ。








階を改めても、なかなかエリーの姿は見えなかった。
もしかしたら、もう居ないのかな。

震える唇を噛み締めて、覗いた資料室。
この階に居なかったら、会社は諦めてもう一度電話してみようかな・・・


なんて、弱気に思いながら。
暗がりに頭を引っ込めようとした瞬間、端の席に機械光。




思わず、飛び込む。

青白いデスクトップの光に浮かぶのは。







鼻の形。伏せた瞼。
頰杖に隠された、細い顎先。



『エリ〜〜〜!!!』

「・・・はっ?!?!」



驚いたら、ますます丸くなる瞳。
眉を持ち上げる癖。



『やっと、・・・』





もう、言葉なんて続かなかった。
私は、この人の全部に安心する。


やっとやっと、見つけた。