もう何時間、こうしていただろう。
柊介と別れて、部屋へ戻って。
着替えもしないままに、床に座り込んでいた。
差し込んだ月の光が、転がった一粒パールを照らす。
片方だけで転がっているということは、もう片方はちゃんと耳に付いているのかな。
そう思うのに、耳朶を辿る気力も残っていなかった。
柊介の言葉が頭から離れない。
あの夜、逃げ出した私に気付いたのはエリーだった。
なぜ、柊介なんかに頼んだのだろうと思った。
直ぐに、あの足では追えなかったからだと気付いた。
なぜ、眞子じゃなかったんだろうと思った。
直ぐに、あの時の私には男手が必要だったからだと気付いた。
何もかもを、いつもいつもエリーは知っている。
その深さを思うと、無知な自分が痛いほどに憎かった。
何よりも許せないのは。
あの夜から今日まで、知らずして過ごしてきたこと。いつものようにエリーと言葉を交わした、愚かな自分。
姿見の中の自分と、目が合った。
巻いた髪は解けて、猫背で床に座り込む。暗がりで表情は見えないけれど、きっとメイクも崩れて疲れた顔をしている。
いい気味だと、思った。
頭から倒れて、固いフローリングに寝転ぶ。
このまま永遠に、暗闇の中に閉じ込められてしまえばいい。
そしてもう二度と、日の目なんて見なければいい。
もう二度と、誰にも________
________エリーが、浮かんだ。
もう二度と、エリーに会えなくなる。
言葉の続きに、頬が濡れた。
流れるその冷たさに、知る。
“エリーに会いたい”
止め処なく頰を伝って溢れ出す。
“エリーに会いたい”