#眞子side
今までは、会った時しか顔を思い出さなかった。(それは正確には、思い出すとは言わない)
それが、今では噛み締めるように辿ってしまう。
止めたいのに、高揚なんて。
自分で自分が、手に負えない。
エ「廣井さんと須藤は、よく似てるよ。」
眞「どういう事?」
エ「本当は自分に自信がないんだろうな。」
エリーの悪いクセ。
エ「俺はいつもそれを、勿体無いなと思うけど。」
酷く優しく、本質を見抜く。
眞「・・・だって、やっぱり怖いじゃん。」
ムクれて背中をソファに落としたら。
笑ってピザを取り分けてくれた。
エ「行けばいいんだよ、廣井さんの反応なんて待たずに。一人で考えあぐねる前に、行って確かめた方がよっぽど正しく分かるはずだよ。」
眞「確かめるって?廣井さんが、私をどう思ってるかってこと?」
エ「違う。須藤自身が、廣井さんを好きかどうかってこと。」
噛り付いたマルゲリータは。
エ「須藤が一番知りたいのは、本当はそこなんだと思うよ。今の自分が信じられないんだろう。だから、慌てて怯えてる。らしくないよ。笑」
載せ過ぎではないかと思うほど、トマトが甘く広がった。
眞「好き・・・じゃない、と、思うけど、もし好き・・・だったら?そしたらどうすればいいの?」
拒絶されるかも、しれないじゃない。
そんな気は無かったって、一時の思い付きだって言われるかもしれないじゃない。
だから、相手の気持ちが知りたいと思う。
自分の気持ちに、気付ききってしまう前に。
エ「大丈夫。全力でサポートする。」
エリーの悪いクセ。
エ「どっちに転んでも、俺が後悔させない。」
酷く優しく、相手の背中を押し切ってしまう。
手を伸ばした、ティフィンソーダ。
痛んだ鼻先を癒すには、まだ十分な香りが残ってた。
眞「・・・本当に?万が一私がフられてボロボロになったら、ちゃんと責任取ってくれんの?」
エ「うん、取る取る。笑」
眞「どうやって?エリーが代わりに付き合ってくれる?」
エ「須藤は、自分が好きな相手じゃないと上手くいかないよ。」
眞「上手く逃げるよね〜、ほんとムカつく。じゃあ朝まで夜遊びに付き合ってよ。エリーの奢りね。私が廣井さんなんて完全に忘れちゃうまで、何日も何日も帰さないから!」
あっは、と。
未だに目が醒めるような笑顔を見せて。
望むところだ、と頷いたエリーの声は優しかった。
エリーにも十和子にも。
好きな人たちにはみんな幸せになって欲しいのに、そうはいかない道理があるんだろうか。
薬指に載せたネイルのストーンが、一粒落ちている事に気付く。
気付かないうちに、何処かへ消えていったキラメキ。
取りこぼしたくないと思う。
相手の幸せが自分の幸せ、なんて。
私はそんな綺麗事、もう誰にも言わせたくない。