心の準備待たずに、受け渡される小さな身体。不器用に、だけど大事に両腕で受け止めた。
握り締めた手も、赤みを帯びた足も。何もかもが、作り物みたいに小さい。
『初めまして・・・。』
濡れた黒目と目が合ったら、そんな言葉が自然と溢れた。
返って来たのは、顔面全部で繰り出しても、まだまだ小さな欠伸。瞬きの隙間から、不思議そうに私を見上げる。
誰だろうって、思ってるのかな。
それでも体を預けるしかなくて、大人しく抱かれてくれる。
なんて無垢なんだろう。
こんな愛しさは初めて。
シャッター音が聞こえた。
携帯のカメラを掲げた柊介だった。
叔父さんに、なったんだもんね。私なんかよりよっぽど愛しいよね。大切で堪らないよね。
被写体、美紅ちゃんの体を柊介側に向ける。
支える腕に力を込めて。
一通りのシャッター音を浴びた頃、ストロベリーの香りを連れて明日香ちゃんが戻って来る。
明「紅茶入ったよー・・・、あっ、やば!!十和ちゃん逃げて!」
『え?』
明「お兄ちゃんの被写体、美紅じゃなくて十和ちゃんだわ!汗」
『は?!汗』
明「いまカメラロール見えた!震えた!!」
柊「チッ。」
『ちょっ、しゅうす、』
忌々しそうに携帯を下ろす柊介に嚙みつこうとしたら、腕の中の美紅ちゃんがぐずり声をあげた。
『えっ、ごめんね、大きい声でびっくりしたね、どうしよう明日香ちゃん!』
明「違う違う。美紅は叔父さんが怖いんだよね〜、変態だから。」
柊「変態って言うな!怒」
消してあげなよ、と柊介に睨みを効かせながら。明日香ちゃんは美紅ちゃんを取り上げて奥の部屋へ消えて行く。
柊「変態だなんて、美紅が覚えたらどうするんだ。」
忌々しそうに閉まる扉を目で追いながら、さり気なく携帯を仕舞う柊介の手を。
柊「ん?」
『ん?じゃない、消して。』
柊「後でね。」
『後じゃない、今っ!汗』
柊「全部消すのは時間がかかる。後でね。」
全部って!!
爽やかな笑顔を前に、声を失う。
本当に変態か!汗
益々食い気味になりそうなのを抑えて、一呼吸。
美紅ちゃんを前に長居は出来ない。
今日の本題を、全うしなければ。
『柊介、あの件もそろそろ!』
柊「ああ・・・、うーん・・・。」
『ほら、明日香ちゃん戻ってくるから。』
柊「・・・。」
『大丈夫。ぜっったいに喜ぶから。』
柊「・・・気味悪がられないか。」
『そんなわけない!家族なんだから。』
“家族”のフレーズは。
先ほどのフラワーショップで同様に、柊介の心を動かした。