手ぶらで伺うわけにはいかない。
だけど、出産祝いには慣れていない。
何が明日香ちゃんの役に立つのか思い付かない。
「大抵のものは買い揃えた。俺がね。だから気を遣う必要はないよ。」
『そう。』
「インターネットや雑誌でね、著名人が愛用するベビーグッズなんかを調べたんだ。
これがなかなかファッショナブルで機能性も高いから、十和子にもぜひ見て欲しい。」
『ふーん。』
嬉々として喋り続ける柊介の声を片耳に、私は何か贈れるものがないかと通りに目を凝らす。
早く、何か思い付かなきゃ。
見覚えの出てきた横浜の風景に、フツフツと焦りがつのる。
「特に、北欧のブランドがあってね。そこの椅子は体の成長に合わせて・・・」
ふと、通りを行き交う人たちの向こうに小さな花屋が見えた。
はな。お花。
__________________お祝いに、お花!
「・・・だから、無理させることなく子供を正しい姿勢で座らせ、」
『ストップ!あの信号でちょっとストップ!!』
「えぇ、?!汗」
突如叫んだ私の声に、車体が一瞬蛇行した。
舞い降りたヒラメキに、これしかないと気持ちは急上昇。
私から、明日香ちゃんへ届けたい気持ち。そこには必ず、柊介が重なる。
不可思議に首を捻る柊介の手を引いて。
甘い香りの軒先へ滑り込んだ。
散りばめられた色の中で、明日香ちゃんに贈る色を探す。
私の知る意味を、一つ一つ柊介に伝えながら。
私たちが重なる、最後の気持ちを探しながら。