明日香ちゃんのことを。

心から可愛いと思ってきた柊介の姿が見え隠れして、胸のあたりが温かくなった。


きっと。

誰よりもいい叔父さんになるんだろうな。
明日香ちゃんが、笑って暑苦しがるくらいに。


私はその姿を見れないけれど。





『そっか・・・私も会いたかったな。元気で、丈夫に育ってくれるといいね。よろしく伝えてね。』

「十和も来る?」



思わず、運転席を見上げる。柔らかな瞳と目が合った。



『いいの?!』

「勿論。十和子が良ければ、だけど。」



十和子が、良ければ。

この状況をやんわりと指し示す言い回しではあったけれど、軽い口ぶりのおかげで何て事ないことのようにも思える。


普通なら、別れてしまえば家族に会わせたりしないだろう。
だからこそ、素知らぬフリで軽く誘う。


柊介の優しさだ。

この誘いに他意はないことを、穏やかに表す。





『・・・。』


甘えていいのか分からない。

別れたのに、こんな誘いに乗るなんて思わせぶりかな。
だけど、明日香ちゃんにも赤ちゃんにも会いたい。




譲ってくれるとするならば。

それは、こんな我儘な私を受け入れてくれる柊介の方だ。






『柊介が、』


私の方こそ、どうか。


『嫌じゃないなら、行ってもいい?』


他意なくこの気持ちが伝わりますように。






頬が染まったのが、自分でも分かった。

意を決して見上げれば。
驚いたように、大きな瞳が見開いていた。



「・・・可愛いすぎる。抱き締めてもいいか?」

『は?!駄目だし!!汗』



思わぬ返しに、慌てた声は裏返って。

一拍空いて。私たちは、お互いの反応に吹き出した。




声をあげて柊介が笑う。
隣で私も、お腹を抱える。
穏やかな光が車内を満たす。

温かく目尻を濡らしながら、願う。




どうか、生まれた絆や思い遣りはこの先も。

立ち消えずに、続いてくれますように。