引っ掛かった正体は、エリーの一瞬の仕草。
廣井さんの時と、さっきの八坂さんの時とは違った。
廣井さんの時は、私と一緒に震える画面を覗き込んだのに。
八坂さんの時は、一瞬で携帯を取り上げた。
___________大きく画面を覆うように手の平を広げて。
エ「須藤も一旦、ジュースにすれば?ちょっとペースが速いんじゃない。」
何かを、隠した?
眞「うーん、そうだねぇ・・・ジュース休憩にするか。清宮さん、コーラ二つ。」
柊「了解・・・って、俺は店員じゃない。怒」
エ「あっは。」
画面を、隠した?
眞子につられて呼び鈴を鳴らしてしまった柊介は、そのまま店員さんへ注文を伝えて。
入れ替わりに戻ってきた廣井さんが席へ着くと、眞子は何故か急に大人しくなって。
もう柊介につっかかることもなく、黙々と食に集中した。
廣井さんとエリーの会話を中心に、時々柊介が返事をして談笑が進む。
八坂さんは依然、戻って来ない。
私は下を向いて雲丹を掬う眞子を前に、妙な引っかかりがまだ取れない。
エリーは、さっき何を?
八坂さんは、一体何を受け取った___________
そう、また繰り返しかけたところで溜息が溢れた。
私は本当に、何やってんだか。
エリーの所作を勘繰っても、戻らない八坂さんを懸念しても意味がない。
だいたい、八坂さんなんて簡単に予想を裏切る。
元々読めないあの人を読もうとしたって、時間と労力と無駄じゃない。
それに。
私には別に、関係ない。
心の中で言い切ったら、少しだけ靄が晴れた気がした。
この勢いで、化粧室にでも行ってこよう。
気づけば夕方からメイク直しも出来ていない。リップとチークを明るく直して、気分を変えよう!
盛り上がる柊介たちの背中をそっと抜けて、バッグを片手に部屋を出た。