クリーム色の小さな封筒。
メッセージカードを入れるようなそれを、小箱を置いて代わりに取り上げた。
何だろう?宛先人への、メッセージカード?
メッセージ付きでヴィタメールのショコラなんて。なんて気の利いた贈り物__________
こんな素敵な贈り物。
間違いなく宛先は私じゃないなと、油断して開いたそこには。
転がり出て来た、ポンテヴェキオの一粒ダイヤ。
慌てて、声をあげそうになった唇を抑える。
全身を、甘い熱が駆け抜けた。
だって。
だって、これは。
八坂さん。
彼の家に、洗面台に、私が置いてきたあのピアス。
『うそ・・・なん、で・・・?』
胸が熱い。痛いくらいに暴れてる。
忘れ物を添えて。
このショコラの贈り主は、八坂さん。
宛先は、この私。
大事にしていたピアスだったけれど。忘れたことさえ、忘れていた。
シャワーを浴びる前に外して。あのままあの場所へ忘れてきたんだ。
八坂さん、よく私のだって分かったな。
ていうか。
他の誰でもなく、すぐに私だと連想してくれたことが嬉しい。
だって、他の誰も。
思い浮かべる余地がなかったってことだよね?
首を振る。
またよからぬ期待はやめろ、と。
なのにちっとも。
胸の早鐘は治らない。
震える指先が、カシス色のショコラを摘む。
食べちゃ、だめだ。
また大きなニキビができて後悔するから。
食べちゃ、だめだ。
このショコラは確か、薫り高い洋酒をふんだんに飲み込んでいて。
私は彼の思惑通り。きっと、ショコラにも洋酒にも彼を思い浮かべるようになってしまう。
食べちゃ、だめだ。
こんな気持ちで口にしたら、ショコラの味を彼と錯覚してしまう。
深く濃厚に蕩ける。
甘味の奥に、痺れるようなほろ苦さを忍ばせて。呼吸のたびに、全身へ広がるスリル。
彼にはなんて、ショコラが似合うんだろう。
つかの間の睨めっこを経て。
・・・一つ、だけよ?
一つだけなら、この時間でもいいよね?
せっかく戴いたのに、勿体無いし。
言い訳を探した。
自分で自分に言い聞かせるための。
彼に陶酔するための、言い訳を。
そっと崩さぬように持ち上げる。
唇に触れたら、息が止まった。
甘味も舌触りも、目隠しされるようなスリルも。
何もかもが、彼のキスに似てる。
深呼吸の後に、諦めにも似た決心を。
私は一人、瞳を閉じて。
舌先から
八坂さんに溺れた。