ひと段落ついた、と八坂さんが呟いた時。
柊介は嬉々として立ち上がったけれど。
「今から営一のあげた施策書に目を通す。」の一言で。
唇をへの字に曲げて、またストンと腰を下ろした。
『なに?帰らないの?』
不貞腐れた柊介は勿論、丸眼鏡で頬づえをつく八坂さんも何も答えない。
仕方がないから、私もやりかけていた手元のファイル作成に戻ったけれど___________
_______________直ぐに、その理由を知るところになった。
八「おい、この下期の対前年103パーっていう数字はどこから来てる?」
柊「言うもんか。」
八「・・・根拠なし、施策申請却下、」
柊「新商品なしで前年が8億だから新商品三つ込みの今期は集団募集がないというマイナス要因を相殺しても大体これくらいの数字は見込めるんだよっ!」
な、なに?すごい早口でいま何て言ったの??汗
柊介の、息継ぎのない怒涛の返答に驚く。
それなのに八坂さんは。
八「・・・なるほど。」
ちゃんと聞き取れて、その上腑に落とせたようで。
頬づえをついたまま、何かのボタンをクリニックした。
柊介が、寄せた眉の下で鋭く八坂さんを睨み付ける。
欠伸をする八坂さんは、気づいていないのか気づかぬふりか。
どういうこと?
ソッと八坂さんの後ろから、端末の画面を覗き込んで合点する。
そこは施策の決裁画面で、「施策申請者:清宮柊介」に「一次承認者:八坂蒼甫」の字。
どうやら、八坂さんは海営の課長代理として。決裁者廣井さんの前に、柊介たち営一のあげた施策書をチェックしているらしい。
「今から営一のあげた施策書に目を通す。」というのは、柊介への煽り文句で。
弁明も出来ぬまま自分の申請を却下されては困ると、柊介も居残ることにしたらしい。
八「この見込みはカタイのか?」
柊「俺は営一で一番慎重派だ。」
八「確かに。一番のビビりではある。」
柊「おい。怒」
・・・仲が良いんだか、悪いんだか。欠伸を噛み殺したところで、今更な不可思議に気付く。
『ねぇ、柊介。』
柊「うん?」
瞬時に、振り返る眼差しに慈しみを込める変わり身。