女?もしかして、八坂さんの本命?

彼女がやって来た・・・?!汗


『やさ、八坂さんっ・・・!』

けたたましいチャイムに手が震える。バスルームのドアをノックしても、聞こえるのは跳ね回る水音だけ。



どうしよう。
その間も、間髪入れず呼び続けるチャイムの音に、居留守は無意味なんだろうと察する。

この時間に、こんなに執拗に。
よく知った仲でないと、こんな荒技出来っこない。



“ピンポン”“ピンポン”“ピンポン”


出る・・・?けど怖い!!汗
バスルームのドアを離れ、そろそろと玄関へ移動する。


重厚な玄関の扉。

もうあの向こうにいるの?
いや、ここはセキュリティ万全な高級マンションだったはず。ってことは、このピンポンの主はまだ下にいるって事だよね?


なんとなく、ホッと________________





________________したのも、束の間。



ガチャッ。


ガチャガチャガチャガチャッ!



大きく動く、玄関のドアノブ。
誰かが反対側から、乱暴に引き開けようとしている動き。


いる!!!
下のセキュリティを突破して、もうここまで来てる!!!!汗






振り向く。
まだバスルームから水音が響くのを確認して。

ガチャガチャと動き回るドアノブに視線を戻して。


・・・私が開けるしか、ないよね。
ゴクリと喉を唾液が下る音がした。



一歩ずつ、一歩ずつ。
音を立てて暴れるドアノブに近づく。

危ない人かな。
ううん、セキュリティを突破して来れたって事は、この部屋のカードキーか暗証番号を知ってるって事。

深い仲でないと、そんな事知りようがないし。




うっすら働く、女の勘で。
このドアの向こうにいるのは、女性な気がする。

血相を変えて駆け付けてきた、八坂さんの本命。
もしそうだったら、私はただの部下で今夜は泊まり込みで仕事を手伝っているのだと。
やましい事は何もないと、ちゃんと説明してあげなきゃ。

大丈夫、落ち着け自分!!



深い深い、深呼吸を、一つ。

相変わらず震えるドアノブに手を伸ばして。
指先が届きそうになった、その瞬間。












鼻先を、湿ったソープの香りが掠めた。



背中に温かい、誰かの気配。

私の指先を追い越し、ドアノブに触れる大きな手。

反射的に引き上げられた右上の視界に、細い顎先と。
その顎先を伝う、シャワーの雫。



端整な顔立ちは頭にかけたタオルで覆われているけれど。
覗く瞳は、蕩かすようなサディスティック。








八坂さんが私を追い越して。

暴れ回る、ドアを開けた________________。