2回目のたまご粥は、一緒に食べて。
胡座をかいて大人しく待っているので、またパウチから薬を取り出してあげた。



水と一緒に、口へ放り込んで。
上を仰いで、大きく動く喉ボトケと。一瞬苦しげにひそむ眉。

それだけで辺りに充満する色香に、食器を持って慌てて立ち上がった。








もう23:00か。あとどれくらい、残ってるんだろう?

キッチンからリビングを伺う。
PCに向かう八坂さんは、やっぱり横にはならず、仕事を再開させたようだった。

まだまだ、先は長そうだな。





使用感のない、真新しいスポンジにベリーの香りの洗剤を泡立たせる。


身体がキツいのは、タイトなスーツとストッキングのせいかな。
普段だったら、この時間はもう楽な部屋着に着替えている頃。

コンタクトが目に張り付く、この感じ。ワンデーだし、取って捨ててしまいたいけど、代わりのメガネを持っていない。

肌も窮屈に感じる。柊介と会うと思って念入りに仕込んだベースメイク。
家に帰れるまで、落とせないなぁ。




________改めて、早く終わらせようと決心して。

タオルで手を拭きながらリビングに戻ると、視線をあげた八坂さんと目が合った。



『お茶、入れます?』

「シャワー浴びてくれば?」



一瞬。何と言われたのか理解出来なかった。

聞こえたままの言葉は、刺激的で。そんなはずないと、脳が跳ね返した。



『お茶?』


まだ瞳が濡れてる。熱、下がってないんだろうな。
熱いお茶を飲んで、身体をあっためた方が________




「“シャワー”。浴びてくればって言ってんだよ。」

『なっ!?』


聞き間違えじゃ、なかった?!?!汗
身体中の毛穴から、汗が噴き出す。



「悪いけど、もう少しかかりそうだし。まだ手伝ってくれんなら、好きな時にシャワー使ってくれていいから。」



しゃ、しゃわー!!汗
目がチカチカする。こんな時間に、こんなシチュエーションで。



「あ、部屋着もいるか?」



よりによって、この人から。


平然と立ち上がり、奥のベッドルームらしき部屋に入っていく背中に立ち竦む。



「こんなのしかねぇけど。」


スウェットに、一歩間違えればダサくなる丸眼鏡。
それさえ芸能人のオフショット的に纏う、カリスマは。真っ直ぐ私の前に戻ってきて________



「・・・デカいか?」



一目瞭然、彼サイズで大きいであろうそれを広げて。

首を、傾げた。






____________________可愛いすぎるんですけど!!!!!涙




『いただきます!!』


広げられたVETEMENTSのフーディーを奪い取って。
その足でバッグを取り上げて、バスルームと思われるドアまで走った。


やばい!可愛い!もうなにあの人!!
こんなデレた顔、見られるわけにはいかない!!