#眞子side



予定は未定の金曜日。

後輩から、人数合わせに誘われた合コンで。

相手側は、某大手メーカー勤務のアンダー25。こちら側は、某一流商社受付嬢チームのアンダー25。(※私を除く)
悪くない肩書き同士の試合なはずだった。


同じ二十代後半であるはずの、25歳と28歳。
その壁を勝手に超えられなかった私は、二次会の気配が漂う前に「お先に♡」と。
努めて明るく撤退した。


えらく肩が凝ったな。
そんな印象しか、残らなかった。





まだ21:00前の表参道は、これから夜遊びに繰り出す人たちで溢れていて。
カップルと、若い夫婦と、小さな子供とすれ違う。

28歳。
予定では、とっくに結婚しているはずだった。
出来れば、背の高い、ハイスペックな旦那様をゲットして。可愛い子供を育てながら、ママ友とお茶してるはずだった。





この時間なら、まだバスがあるな。
最近お金使いすぎてるし。エステで勧められて買っちゃった、炭酸ミストの化粧水。
毛穴は小さくなるけど、やっぱり高かった。

少し、節制しないと。
一週間の疲れでクタクタだけど、タクシーを我慢してバスで帰ろう。

人がまばらなバス停に並んで。
少しずつ暖かさを増す、春の夜を吸い込んだ。









前に並ぶカップルの、繋がれた手が目に入る。
恥ずかしげもなく、人前で手を繋ぐ。

下を向いたら。
冬のボーナスで清水買いした、ルブタンのレースパンプスが目に入った。




今の自分。
嫌いじゃないけれど。

描いていた理想と、かけ離れていく現実。
その差を埋める術を、まだ持てていない。



このまま歳を重ねるごとに、恋愛や結婚から遠のいていく気がする。
だからと言って、焦れば焦るほど歯車はズレていく。


経済的にも精神的にも、一人で生きていける余裕はないし。
だけど、掲げる理想もプライドも曲げることは出来ない。
何もかもが中途半端。



何やってるんだろう、私。
きっと、全てにおいて理想が高すぎるんだ。

自分だって、そんな文句を言える立派な女でもないくせに。









_________________やばい。汗

久々にきた、猛烈な自己嫌悪。



飲も。帰ったら、とりあえず飲み直そう!

お取り寄せした山形の白ワイン。あれと生ハムとチーズで。あ、無花果もあったな。

寂しくない。全然寂しくなんかない。
誰にも文句を言われず、朝方まで好きなDVDでも見て。自由気ままな独身生活!



それにしても、バス遅いな。
向かってくる方向を覗こうと、視線を横にズラしたその時__________



よく知った顔と、目が合った。