片親。あっさり告げられたけど、今日の出来事を思えばあっさりそんな環境になった人なんてきっといない。

何でもない事のように、大丈夫だと言ってくれたんだ。

この人って、優しいのかもしれない。
最近そう思うようになっていた。




『私、最低なんです。流されてばっかり。』


この人に打ち明けていい、と。身体が縋っていく。


『あっちから引っ張られたらフラフラ、違う事を知ったら今度はそっちにフラフラ。
一つの場所に立っていられない。』

「それは流されてるんじゃなくて、堪えてるからだろう。」



コトリ、と音がして。



「流されまいと踏ん張るから、彼方此方から引かれてフラフラするんだろう。」



視界が明るく、晴れた気がした。



『そう、なんでしょうか・・・。』

「簡単に流されればそれきりだから、フラフラもなんもねぇよ。」



そっかぁ。

おかしな持論かもしれないけれど。八坂さんの言葉は確実に私の自己嫌悪を止めた。



「まぁ、たまには流されてみるのも悪くねぇと思うけど。」

『流されてみる、か・・・。』



柊介の激情と。
エリーの深愛。

流されてみるって言っても、どっちに?



ふと、目が合う。


『えっと、その場合どっちに?』

「はぁ?」


明らかに怪訝な表情に目が覚める。
私、何言ってるの!!汗

どっちに?なんて。この人が知るわけない!!
まして昨日急遽浮上したエリーという対抗馬。急展開のダークホース。

この人に関係あるわけがないっ!汗



『すいません、なんでもな、』

「俺が決めていいの?」



ゆらり、と。

近づいた一歩の分、視界が暗くなった。



『え・・・?』


決めていいの?なんて。
状況を知らないこの人がそんなこと出来るわけない。


それなのに、どうして。

そんなに強い瞳で、私を射抜くの?



「俺が決めていいのかって聞いてんだよ。」



また一歩近くなる、濡れた涙黒子。

手を伸ばせばすぐ触れられる、片側だけ上がった口角。

鼓動が暴れ出す。




「それなら____________」




濃い香りが辺りを覆った。

もうダメ。反射的に身構えた身体は、ギュッと強く瞳を閉じた。









「俺に流されろ。」