―麻友美side ―

「はぁ…」

私は、屋上の手すりに寄りかかり

ぼぉーっと

外を眺めている。

屋上はあまり人がこないし、独り占め出来るから大好きな場所だ。



ふと校門の方に目を向ける。

校庭に誰かが入ってきた。

その誰かはやたらとキョロキョロしている。

(なに、あの人…)

よく見てみるみると…

誰なのかが分かった。

大嫌いになった、あいつ。

―――拓真だ。



(拓真のことなんて思い出したくなかったのにっ!)


拓真と言えば、

あの一言―――


『お前の、頭の悪さにうんざりしただけだ。』


好きな人にあんなこと言われたら、

誰だって傷つく。




拓真とは、幼なじみ。

だから拓真のことなら

何でも知ってると思ってた。

拓真は、

格好良くて、頭良くて、優しくて―――

そんな拓真のことをずっと追いかけてた。

大好きだった。


なのに。


最近の拓真は、

イライラしてて。どこか悲しそうで。

本当は、聞きたかったんだ。

相談に乗ってあげたかったんだ。

けど、
聞いちゃいけないような気がして―――



それでも、聞いてあげた方が良かったのかな?


そうすれば、
拓真と喧嘩しないで済んだのかな…?


(あれ…?)

さっきまでなんともなかった校庭がぼやけている。



(私、泣いてるんだ…。)


何でだろ…?

何で?


本当は

そんなことは分かっている。


傷つけられたのに、

大嫌いになったのに、



まだ、





君のことが好きだからだよ―――。